ディズニーのクリスマスに起きたゲストとのエピソード~WDW元キャストの話~

ディズニーで働くキャストは土日・祝日関係なくシフト制で働いています。

筆者がディズニーワールドで働いていたときも例外ではなく、

アメリカの一大イベント、クリスマスもオンステージの日本館で働いていました。

そんなクリスマスの日から数年経った今でも心に残ったゲストとの思い出のエピソードについてご紹介します。

 

 

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アメリカのクリスマスの過ごし方

アメリカでは、11月のThanks Givingが過ぎたら一気にクリスマスモードに。

日本で家に飾るクリスマスツリーといえば、小型のプラスチックなどで作られたツリーなどがメジャーですが、

本場アメリカでは本物のを木を使うことも少なくありません。

高校生の時、留学していたホストファミリーはクリスマスツリーの販売されている山(?)まで向かい、

そこで実際に生えている木から選んだものをのこぎりで切って購入していました。

 

そこで切った木を持ち帰り、クリスマスツリーとして家の中で飾りつけをします。

 

日本のクリスマスは恋人たちの一大イベントとして過ごす日となっていますが、

アメリカではもちろん恋人と過ごす人もいますが、基本的には家族と一緒に過ごすのが一般的。

私も留学していた時は、ホストファミリーとホストマザーの家族と一緒に

ターキーやジンジャークッキーなどのクリスマス定番のメニューを一緒に食べ、

穏やかな日を過ごしました。

 

 

ディズニーのクリスマス

ディズニーワールドでもクリスマス期間限定のイベントが行われます。

マジックキングダムで毎年クリスマスの時期になるとMickey’s Very Merry Chrismas Partyというイベントが行われます。

このイベントは専用チケットが必要で、別途チケットを購入しなければならないのですが、

このイベント限定のショーやパレード、またクリスマスの定番クッキーやキャンディケーン(白と赤のシマシマのあめ)が配られたりもします。

(通常チケットでも日中行われるイベントはクリスマス仕様)

 

パレードにはサンタさんも登場したり、ハッピーな気持ちでいっぱいになるイベントなので

クリスマスシーズンに訪れる方は、是非参加してみることをおすすめします。

時期的には毎年11月2週目からクリスマスまで開催しているようです。

 

 

ディズニーワールド日本館でのクリスマス

そんなディズニーのクリスマス当日。

私はエプコットの日本館で働くシフトが組まれていました。

マジックキングダムの”Very Merry Christmas”の盛大な賑わいを見ているとエプコットもクリスマス当日は相当混んでいるんじゃないか…?

と、少々心配しながらも、

その日はお休みシフトのルームメイトに応援されながら覚悟を決めて出勤。

 

当日は、日本酒を提供する酒バーの担当の日でした。

 

この酒バー。

基本は1人でお酒のご案内からグラスに注いで片づけるまで全てを担当するもの。

 

お店が空いているときは

ゲストひとりひとりとゆっくり時間をとってお話出来るので大好きなセクションなのですが、

混むときはバーカウンターの周りをぐるっとゲストに囲まれて3重4重にも列をなしてしまう時があり、

てんてこまいになることも…。

 

やはりアメリカの一大イベント、クリスマスもそうなるのか…?

…と思いきや、意外とその日は空いていて

ゆったりとした空気が流れていました。

 

もしかしたらゲストはみんなマジックキングダムの方に流れていたのか、

クリスマス当日は、やはり家族でゆっくり過ごしていたのかもしれませんね。

 

 

不機嫌そうなゲストとのエピソード

そんな中、酒バーにある一人の中年女性がやってきました。

お世辞にも決してキレイとは言えない身なり、

表情も何か嫌なことがあったのか、とても不機嫌そう。

失礼な表現になってしまいますが、

小心者の私から見ると町中で出会ったら「少しこわいな…」と距離をとってしまいそうな方でした。

 

日本館のディズニーキャストたちは基本的には積極的にゲストに声をかけることが多いのですが、

こういう時にどう対応するべきか、とても迷います。

 

そっとしておいて欲しいのか、話して欲しいのか…

元から不機嫌であれば、一歩間違えればクレームにも繋がりかねません。

 

その場に居合わせた同僚たちを見渡すと、皆「そっとしておこう」といったスタンスをとっているように見受けられました。

 

「自分はどうする?」

 

そう問われた立場になったとき、せっかくディズニーに来ているのであれば、

もし何か事情があって浮かない気持ちでも、

ゲストはキャストたちにディズニーらしい対応を取ってもらいたいのではないのだろうか。

と考えました。

 

そこで、勇気を振り絞り、

「いらっしゃいませ。Welcome to Japan. How are you today?」

と話しかけてみました。

※日本館ではリアルな日本を演出する為、日本語で最初に「いらっしゃいませ」とお声がけをしています。

 

すると、そのゲストは挨拶もそこそこに

メニューを見ながらどの日本酒にしようかな…と迷っている様子。

そこで、どういったお酒が好きか聞き、好みに合いそうなお酒を選ぶことにしました。

”Do you like sweet, or dry” (甘口と辛口はどちらが好きですか?)

そこで辛口が好みと答えられたので、

お酒が好きな方は辛口が好きな人が多いことを思い出し、

念のため、お酒をよく飲むかどうか伺って

お酒をよく飲む女性ゲストが好んで注文するにごり酒のMurai Nigori Genshuをオススメしました。

”Sake is smooth and clear but this is thick and more like milky texture.”

(日本酒はあっさり・スッキリとしているけれど、これはもっとミルキーで濃い感じのお酒です)

と紹介したところ、

「それにするわ。」

と決定しました。

 

それまでずっと不機嫌そうな態度は変わらないままのゲスト。

これでお勧めしたお酒が口に合わなかったら…?

とドキドキしながら見守っていました。

 

すると一口飲んだゲストが一言。

”Oh,this is good.” (これ、いいわね)

 

ホっと胸をなでおろして

”I’m glad to hear”(そう言ってもらえて嬉しいです)

と言って仕事を続けていると

 

”This is really good”(ほんとにおいしい)

と、また一言。

 

心の中で小さなガッツポーズを決めていると

ゲストはさらっとお酒を飲み終わり、

去り際に、ありがとう。と言われてお店を出て行かれました。

 

 

また来た…え、また?

そんなゲストが去り、

無事に対応できて良かったな。気に入ってもらえてよかったな。と思いながら、仕事を続けていると、

数時間後に、またあのゲストがやってきました。

”Welcome back!”(おかえりなさい!)とお迎えすると

ゲストは前回オススメしたお酒を再びオーダー。

 

とても気に入っている様子だったので、ボトルのお酒も紹介したり、少しだけ打ち解けたので雑談も交わしました。

するとパーク内でのATMの場所を聞かれました。

それまでクレジットカードでお酒の支払いをしていたのに不思議だな。

と、うっすらと思いながらもAmerican Adventure(アメリカ館)にあることを伝えると、

お礼を言われて、去っていきました。

 

 

しばらくすると、またあのゲストが!

 

今回は別のものを頼むのかなと思いきや、

またMurai Nigori Genshuをオーダー。

 

一般的に日本酒のアルコール度数は14~15度くらいなのですが、

このお酒に限っては20度

こんなに飲んでしまって大丈夫なのかな…と少々不安を覚えながらも提供すると、

またサクッと飲んで、今度は現金で支払われました。

 

お会計を済ませてお釣りを渡そうとすると、

なんと、チップとしてお釣りの10ドルを私に手渡そうとしてくれたのです…!

チップの相場は一般に支払う金額の20%前後と言われていて

このお酒の値段は1杯8ドル

 

つまり支払った金額よりはるか上…!

その日の一日のトータルで3杯×8ドルでも24ドル。

24ドルの20%でも4.8ドルなので、倍以上のチップを私に渡そうとしてくれていたのでした。

 

けれども、ここは日本館の物販部門。

残念ながら物販部門ではチップを受け取る事は出来ないので、

感謝の気持ちを伝えつつ、その旨を伝えると、

 

とても残念そうに

「あなたにチップを渡したくて、ATMに行ってお金をくずして戻ってきたのよ!」

と言ってくださいました。

 

もう、それだけでも胸がいっぱいになりながら

このお金で是非また飲みに来てくださいね。とお伝えして、

それでも残念そうにされていたので

ゲストが素晴らしいと思ったキャストに書けるカード、「ゲストコメントカード」を書いていただきました。

 

思わぬディズニーでのクリスマスプレゼント

この日の体験は、本当に忘れられない出来事となって、今もよく覚えている大切な思い出です。

 

あの時、

人を見た目だけで判断せず、しっかりとゲストをゲストとしてお迎えしなければ

決してこんなに心に残る出来事にはならなかったかもしれません。

ゲストの立場に立って考え、勇気を振り絞って本当に良かったなと思います。

 

そして、今思い返すと彼女はクリスマスに何らかの事情で家族と一緒に過ごせなかったゲストだったのかもしれません。

そんなゲストにもクリスマスという大切な一日を少しでもハッピーに出来たのかな、

そうだと嬉しいなと思っています。

 

 

 

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